Contents
・「BanGDream!it’sMyGO!!!!!うたう、僕らになれるうた FILM LIVE」序文
・<論旨>「物語性」と「自意識」
・<ぼざろ、MyGO!!!!!、ガルクラ>
・<物語構造の分析>
・<(アニメ)ロックとアイドルの親和性、自意識>
・<アイドルの自意識と推し文化におけるコミュニケーションを考える>
・<自意識とバンド、シンガー>
・<80’sにおけるアイドルアニメの創出とポップスの導入の時期から検討してみる>
・<サブカルとアニメの接近、AMVと海外市場との親和性>
・<まとめ>あるいは主要ガールズバンドアニメの展望性

https://www.youtube.com/embed/uJ1P_0cLmOs
2024/11/08公開の劇場版
「BanGDream!it’sMyGO!!!!!うたう、僕らになれるうた FILM LIVE」
を鑑賞した。
FILM LIVEの仕上がりに対して本編はTV編のCRYCHIC関連描写をやや縮小し、MyGO!!!!!の観客描写を多めに差し込み、
AveMujicaの描写も完全カットされるなど、
MyGO!!!!!のバンドの決裂と再生に注力した順当な仕上がりだった
(新旧フィルムの違和感がやや大きく映えがちだった点を除き)。
<論旨>
ここでは、日本文化の海外展開を戦略するうえで、
ガールズバンドアニメの現在と今後を考えたい。
重視する視点は「物語性」と「自意識」だ。
その他、検討するべき論点としては、2010年代以降のアイドルブームからの大転換、かつての『けいおん!』(2009)をはじめとする〈日常系〉の再解釈、
「百合もの」の勃興、ロックンロール神話の再興、声優陣によるリアルライブと「2.5次元」、アニソンのグローバル化、3DCGアニメーションの現在地、、、などもあるだろう。
さて、大ガールズバンドアニメ時代到来!である。
本記事では2020年代ガールズバンドアニメとして
ぼざろ、MyGO!!!!!※1,2 、ガルクラ※1,2を中心的に取り上げたい。
上記3作品の合計で市場規模推定1000億円前後とも言われており、
さらに近々のガルクラ(ガールズバンドクライ)のLiveの盛況、ゲーム化、
またMyGO!!!!!の後編であるAveMujicaを2025冬に控えるなど、
まだまだリリースは続く見込みである。
マクロ的には、
アニメ産業における音楽事業の売上が漸減する一方(317億円→274億円、2023年度)で、
ライブエンタテイメント事業の急激な盛り上がりなど(571億円→972億円、2023年度)、大勢も追い風の状況だ。

https://www.youtube.com/embed/kdG3b-Ofhyg
<ぼざろ、MyGO!!!!!、ガルクラ>
それぞれ3作品については本Blogを始め様々なメディアで取り上げられているため、コンテンツの細目には立ち入らず、まず物語構造の比較を考えてみたい。
シンプルに示すなら、3作はそれぞれ以下のように纏められる。
(後述のアラン・ダンダスによる「物語構造研究」を参照)
ぼざろ(ぼっち・ざ・ろっく!)→コミュニケーション弱者による社会参画の過程を、戯画化した心理描写として、ロック音楽で描く。
「日常系」から純粋なビルドゥングスロマンとしてのロック音楽の追求。
MyGO!!!!!(BanGDream!it’sMyGO!!!!!)→コミュニケーション弱者による社会参画の過程を、日常の「崩壊と再生」として、ロック音楽で描く。
「日常系」の不可能性を前提としながら、ロック音楽を通した一回性の「積み重ね」こそが、力強いリアリティを生むとする立場。
ガルクラ(ガールズバンドクライ)→コミュニケーション弱者による社会参画の過程を、直情的行動の生成と失敗による成熟として、ロック音楽で描く。
「日常系」の崩壊後の社会に、パンクロック音楽による価値観の無効化で立ち向かいながら、その厳しいリアリティに敗北する立場。
※詳しくは徳田四氏の各種論考を参照
https://note.com/wakusei2nd/n/n14c525a44ef0
https://note.com/wakusei2nd/n/n2afd637a8ea1
※なお、いずれの作品にも楽曲作成にプロのロックミュージシャンが参画している。

<物語構造の分析>
この分類はアラン・ダンダスによる「物語構造研究」を参考に、大雑把に3点に基づいて整理している。
それぞれ1,物語内の構造的単位。2,構造的単位によって形成される物語の様態。3,物語全体の類型、概念的に理解された物語の全体。
ここではダンダスは、小説などや詩などを対象に物語分析をしており、アニメーションには別の技法の導入も必要との考えがある。
例えば小池隆太は「物語構造論(ナラトロジー)ーアニメ作品の物語構造とその特徴について」(「アニメ研究入門(応用編)」)において、
次の3つの概念を提唱している。
1,語りの表象:映像による物語表象やキャプション、音声による説明等。
2,物語内容(物語構造論(ナラトロジー)に同じ)。
3,物語様態:構成される要素と運動、変化の様態:「シネマ」「アニマ」「ドラマ」
私見では、ガールズバンドアニメを考えるうえで、
重要なのは特に小池隆太が提唱する1と3の概念である。
つまり物語として用いられる音楽(楽曲)、それらをダイナミックに描く(「シネマ」と「アニマ」と「ドラマ」の往復としての)音楽こそ、
隆興するガールズバンドアニメに共通する要素であり、その作品の質を決定付けていると想われる。
「シネマ」とは個々の要素がそれぞれ独立した運動体として示され、主に楽曲シーンにおけるライブ音楽のような臨場感溢れる演出を示す。
「アニマ」とは物語世界の構造を示す複合的な運動体であり、ガールズバンドの登場人物が所属する(主に都心部のローカルが多い)地域を示す。
「ドラマ」とは画面や要素それ自体が静止し、それ以外の物語表象によってストーリーが進行する様態を示す。
主にぼざろにおける主人公後藤ひとりの被害妄想パート、MyGO!!!!!におけるギスギスした人間関係描写、ガルクラにおけるメンバー間の対立描写が当たるだろう。
上記の3要素の循環により立体化する世界観や主人公たちの自意識と、楽曲パートにおける曲調や歌詞との一致度が極めて高いのが、
ガールズバンドアニメ、とくにぼざろ、MyGO!!!!!、ガルクラの特徴であると言える。
ここで重要なのが、いずれの作品にも楽曲作成にプロのロックミュージシャンが参画していることだ。
個人的な感覚になるが、それまで数多くの音楽、とくにロック音楽(ジャンル的にはパンクロック、ガレージロックなど)に親近感のない筆者のような人間が、
物語:ナラティブを通して楽曲に触れることで、登場人物たちの背景を深く考慮しながら、楽曲を楽しむ(リズムにノる)ことになる。
特に今回、
劇場版「BanGDream!it’sMyGO!!!!!うたう、僕らになれるうた FILM LIVE」
を鑑賞するうえで、本編とFILM LIVEとの、映像コンテンツとしての完全な「分離」は重要な示唆をもった。
物語の必然性で演出される、各楽曲パートと異なり、FILM LIVE単体で演出される
ライブパートにおいて、それらは純粋に音楽に「ノレルか」否かの問題になるからだ。
※勿論、「音一会」、「処救生」、「壱雫空」は大好きだ。

<(アニメ)ロックとアイドルの親和性、自意識>
ここで考えたいのは、劇中ないし劇外で生成されるロック音楽の、文芸的な精度の高い価値というより、ロック音楽(バンド)とアイドルとの可換性である。
というのは、その消費形態や市場性において、これらは「ロック音楽」というよりむしろ「アイドル音楽」としての側面を強くもつためである。
そして先述したぼざろ、MyGO!!!!!、ガルクラはいづれも「アイドルアニメ」としての側面を持つ。
具体的にはぼざろの喜多ちゃん/長谷川育美、虹夏ちゃん/鈴代紗弓、
後藤ひとり/青山 吉能はいづれも
IdolM@ster、ラブライブ!サンシャイン!!、WUG(Wake up girls )の出身だ。
またMyGO!!!!!の企画自体、IdolM@sterの主役格である声優の愛美を中心とした、
「<バンドをやる>ラブライブ!」として製作されてきた経緯をもつ。
唯一毛色の異なるのがガルクラになるが、ここには「ラブライブ!」のメソッドを
存分に活かした花田十輝の脚本構成、およびキャラクター製品展開
(プロマイドカード、フィギュア、アクリルスタンドなど)からも完全にターゲットをアイドルアニメ層に絞っている意図が読み取れる(ロック音楽のファンは、従って端から対象外となっている)。
なお、BanGDream!におけるRAISE A SUIREN や Roselia, ぼざろにおける「結束バンド」はプロの音楽フェスにも参画しているが、
ここで論じたいのは、あくまでその消費形態として、生粋のスクリームロック(パンク)のような文化的ハードコア層への訴求ではなく、
むしろビートルズ(のとくに初期)の消費形態に近いものを覚えるからである。
以下では石岡良治の議論を参照に進めてみたい。
アイドルアニメとバンドアニメの可換性問題については以下の要素があると考えられる。
1カリスマ性とパフォーマンス性:
カリスマ性: ロックバンドのシンガーは強いカリスマ性を持つ。
これはアイドルと非常に似ており、ファンの熱狂的な支持を集める要因となる。
パフォーマンス性: ロックコンサートとアイドルコンサートは、
どちらも派手なパフォーマンスや演出を特徴とする。
2,ファンベースとブランド化:
ファンベースの形成: ロックシンガーもアイドルも、ファンとの強い結びつきを持ち、その関係が社会現象化することがある。
ブランド化: 両者ともに、音楽やファッション、ライフスタイルを通じて自己ブランドを築き、メディアを活用しながら広範な影響力を持つ。
3市場戦略とメディア露出:
市場戦略: ロックバンドとアイドルは、音楽の売り方やイベントの開催方法などでマーケティング戦略を駆使し、最大限の商業的成功を目指す。
メディア露出: テレビ、インタビュー、ソーシャルメディアを活用することで、両者は広範な受け手に自分たちのメッセージを届ける。
※要素の参照:ChatGPT4o
また、同様に小関隆氏の「イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへ」(中公文庫)にも、それらの片鱗を読み込むことが出来る。
本著は題名の通り、ビートルズとその前後のイギリス史にフォーカスしたものだが、
そのビートルズ/ロックに関する主張としては、アイドル/ロックンロール/ロック問題は、おおむね冷戦期のUS/UK関係から導くことができる。
本著によると、
「無意識ロックシンガー」はアメリカショービジネス派生のアイドル系譜である。
プロトタイプのロックンロールはアメリカの民衆音楽(ゴスペル、カントリー、R&Bなど)からの断絶と跳躍であるが、ここには黒人と白人との問題もある。
ロック音楽における広義の「自意識系サブカルチャー」はビートルズからの派生で説明がつく(近年では、再結成OASISも含まれるかもしれない)。
※アイドルとロック音楽(広義の。ヒップホップを含む)2020年代における具体例な摘要事例としては以下になる。
- BTS: 韓国のアイドルグループBTSは、音楽的な才能に加え、ファンとの積極的な交流、完璧なビジュアル、洗練されたパフォーマンスによって、グローバルなアイドルとして成功。
彼らの活動は、メディアによって綿密に管理され、ファンとの距離を縮めるための戦略が徹底されている。 - ビリー・アイリッシュ: ビリー・アイリッシュは、独特な音楽性と個性的なファッションセンスで、若者から絶大な支持を得ている。
彼女の音楽は、ダークで内省的なテーマを扱っており、現代の若者たちの共感を呼んでいる。また、ソーシャルメディアを通じてファンと積極的に交流し、自身のイメージをコントロールしている。
ここで課題となるのが、音楽の商業化とアーティストの自由の問題である。
ロックシンガーは、商業的な成功を求める一方で、彼らの創造性を制限され、ファンに消費される「商品」として扱われる可能性がある。
このジレンマは、現代においても、アーティストとアイドル産業の関係において議論され続けるテーマと言える。

<アイドルの自意識と推し文化におけるコミュニケーションを考える>
論点として、筒井晴香「「推す」ことの倫理を考えるために」を取り上げたい。
現在のアイドルは一方的にパーソナリティを露呈してファンに見られるだけではなく、「現場」やSNSを通してファンからの反応を受け止める。
そこには「ファンに己のパーソナリティを支持されていることを直接実感できる場所」というポジティブな側面、
「ファンの主張や欲求がアイドルのプライベートな領域を侵食する可能性」というネガティブな側面の両義性という危ういバランスで成り立っている。
参照が必要な論点としては、次の通り。
①恋愛のオルタナティブ、⑤非対人性愛、⑥一方向の恩恵の意義
↕
②身体・パーソナリティの客体化、商品化。③消費主義。
④異性愛主義、ルッキズム。⑦感情管理。⑧SNS
ここから、アイドルという「非日常」を「日常」に落とし込む過程において、アイドル自身の絶えまない監視下状況が促進する「日常の崩壊」にも繋がるのだが、
ここは徳田四、石岡良治なども指摘するように、文化活動のうえで非常にクリティカルであり、致命傷になりかねない側面だ。
私見だが、自意識の管理が当初から要求されるシンガーや声優に対し、楽器アーティストは「技術者」としての心理的側面も大きい。
例えば、全員楽器アーティストのプロを採用(非・声優)している「ガールズバンドクライ」の劇中・リアルバンドのトゲナシトゲアリは、5人のメンバーのうち、現在二人のメンバーが活動休止状態にある。
アニメ放送期の過密スケジュールに加え、演技未経験の彼女らが突然「アニメキャラ」「声優/ミュージシャンとしての芸名」「生身の『私』」、
複数のアイデンティティに引き裂かれて発信を強いられる負担は想像に難くない。
※BanGDream!(it’sMyGO!!!!!を含む)や、ぼざろ(結束バンド)における演者は全て声優出身(且つ楽器演奏が可能)。

<自意識とバンド、シンガー>
以下ではシンガーと自意識に関し、再び、石岡良治の議論を参照に進めてみたい。
アニメ史における「シンガー」と演奏の問題とは、
「バンドアニメは「ドラマーが良心」問題である。
例としては、伝説のバンドアニメ「DINAMIC CHORD」KYOSOの通称ドヤムさん:諏宮篠宗(すみや しのむね)、
ぼざろの結束バンドにおける虹夏ちゃん、etc)
これらは「シンガー」に主体性が期待される状況と表裏一体であるといえる。
「当方ボーカル。他全パート募集~」(MyGO!!!!!の愛音の序盤の振る舞いなど)
ロックバンド神話の時代における「ボーカル」の位置を考えると、
ボーカルがそのままカリスマの場合、ソロシンガーをモチーフとする場合に構造的な大差が無くなってしまうことが重要である。
例:ビートルズのジョンレノン、ポールマッカートニー等のソロ活動など。
思考実験として、羊文学が羊文学をメインとしたアニメを作ろうとすれば、成り立つ可能性がある。あるいは宇多田ヒカルや椎名林檎でもいいかもしれない。
実はここに「 ぼっち・ざ・ろっく!」の優位点があり、それは主人公(後藤ひとり)とシンガー(喜多ちゃん)を分離することで
過剰な物語構造の負荷を分散させることに(ネタ的にも絵的にも)成功しているからである。

<80’sにおけるアイドルアニメの創出とポップスの導入の時期から検討してみる>
それは、79年の「劇場版銀河鉄道999」EDのゴダイゴからの流れ、
1982年の「マクロス」、1983年「キャッツアイ」と「クリーミィマミ」などが代表的とされる。
余談として、杏里は平和裏にキャリアを重ねたが、飯島真理はシンガー志向があり、アニオタとクラッシュした経緯が。。。
その他として、森口博子における、1986年「Zガンダム」の後期OPでのデビューなども挙げられる。
当時はカルチャーシーンにおけるアニメの地位の低さが根底にあり、
TM Network初期の”your song”など埋もれがちな楽曲があり、
その他にも90年代におけるFLCLのthe Pillowsなども挙げられるだろう。
なお、現在に至るまで日本の音楽の輸出=海外市場でのウケ方は、基本はここにあり、つまりPillowsとFLCLの関係(タイアップ)と同じ形式である。
それは、作品全6話にも関わらず、Pillowsが20曲以上もの提供をしていること、
同時期の動画共有サイトの勃興と隆盛、USオルタナティブロックの志向による欧米音楽市場との親和性、海外ツアーの精力的な活動などを要因としている。
現在では例えば、小室哲哉はGet Wildのおかげで生活が出来ているなど、完全にカルチャーシーンはアニメソングに塗り替わっているといえる。
1990年代サブカルとJ-POPないしJーROCKのリンクについても参照しておこう。
2020年の現在、ゴリゴリのアニソンといえば、JーROCKである。またガールズバンドものがある一方で、ボーイズバンドもの(の著名な作品)が無いのも重要な点だ。
「マクロス7」はロックバンドをモチーフにしていたのは、アイドル(アニメ)が全般的に受け入れられる市場が無かったことにも起因する。
実質的にアイドルであっても「シンガー」(SMAP時代)であった。 PUFFYが日本よりも米国市場でシンガーとしてHITしていった経緯等も付記したい。
※PUFFYは2024年秋のオリジナルアニメ「魔法使いになれなかった女の子の話」でOPを務めている。
退廃的な星野リリィの絵柄と魔法の現代的更新に注目。
https://www.youtube.com/embed/-SssTHzMoBw

<サブカルとアニメの接近、AMVと海外市場との親和性>
ポストエヴァの1990年代後半、深夜アニメの時代も、それほどサブカルとアニメの距離は縮まらなかった。
これは世紀転換期における「FLCL」&Pillowsと作画コミュニティおよび
AMV(Anime Music Video)のリンクetc.などが挙げられる。
例えば、ブルーハーツの「リンダリンダリンダ」の意味合いを「日常の肯定」として書き換えた、邦画「リンダリンダリンダ」は、
後続する「涼宮ハルヒの憂鬱」と「けいおん!」などにより、メタ的に表現する試みとなった。
と同時に、「ハルヒ」や「けいおん!」のAMV(Anime Music Video)のクオリティの高さも相俟って、バンド音楽アニメとして、世界市場に広がりを見せる端緒となった経緯がある。
このように、日本より日本の外で知られるようになったのは、現在に至る「アニソンなら勝つ」状況の起源の一つである。
上記のようにバンドアニメのシンガーの主体性と自意識を考えたときに、それらが物語の内容とのリンクの強度の度合、
及びシンガーや他の楽曲プレイヤーたちが声優/アイドル(志望)であるのか否かが、作品としての強度、及び市場としての伸張性に関わってくるだろう。

https://www.youtube.com/embed/dDwN4MgcIlU
<まとめ>
おさらいとなるが、本記事で取り上げた3作品のぼざろ、MyGO!!!!!、ガルクラにおいて、まとめよう。
ぼざろはアニメの2期も行けるだろう。
要因は、自意識と物語世界との順応性の良さだ。
元々声優とバンドを兼ねていた後藤ひとり(青山吉能;WUG)や、虹夏ちゃん(声優;鈴代紗弓は「シャインポスト」の主役春ちゃんでアニソンOK)、
さらに喜多ちゃん(声優:長谷川育美)もあり、全体的に存在感と対メディア戦略が卒ない印象である。
MyGO!!!!!も問題ないだろう。
自意識と物語世界との順応性は勿論、特に脚本の綾奈ゆにこ と、羊宮妃那(燈の声優)との楽曲の相性が抜群だ。
2期も決まっており、先行するMyGO!!!!!のバンド活動はもちろん順調であり、
先般の上海公演も盛況であった他、
2期のメインとなるAveMujicaも早々に活動を開始している。
もともとBanGDream!の企画自体が、ブシロード社長の木谷と、BanGDream!初代主人公の愛美の声優のバンド活動の発見による、
サーガ的なガールズバンドの文化的形成を意図しており、声優活動と公演のバックアップ体制も盤石であると言える。
※余談だが、ブシロード木谷社長は、BanGDream!シリーズを、ブシロードの「ガンダム」にするべく目論んでいる。
ガルクラは、最も心配だ。
非声優(楽器アーティスト)の自意識と物語世界との乖離が大きい。
バンドグループのトゲナシトゲアリは過去の公演もMVも大盛況であり、海外ウケも抜群で、来年の春先まで公演が満席御礼との情報である。
一方で先述した通り、5人のメンバーのうち、現在二人のメンバーが活動休止状態にある。
アニメ放送期の過密スケジュールに加え、演技未経験の彼女らが突然「アニメキャラ」「声優/ミュージシャンとしての芸名」「生身の『私』」、
複数のアイデンティティに引き裂かれて発信を強いられる負担は想像に難くない。
今後も、福嶋良大が「神話が考える」理論のように、数多のガールズバンドアニメが出てくると予想されるし、
2024年時点でも既に幾つものガールズバンドアニメが生成されており、その市場拡大余地はまだまだ見込まれるだろう。
その際に、本論で示したような、演者の自意識と、物語世界とのバランスが、
演者自身に寄り添うような活動であり続けることを願う。
それこそが、ガールズバンドアニメのサステナビリティの一つの要素になるだろう。
※さらに考慮すべき論点としては、石岡良治が指摘するように、先行するアイドルアニメとの相違点かつ弱点として、ユーザー層に「女児枠」「男児枠」が欠如している
=「アンパンマン」「ポケモン」「ドラえもん」のような普遍的な射程を持ちにくいことも付記しておきたい。

https://www.youtube.com/embed/B8k6JtF6WrU
最後に。個人的にガールズバンドアニメにおいて、最も優れた歌唱と歌詞は、MyGO!!!!!の「迷星叫」(まよいうた)だと思う。
特に劇中(TV1期12話、劇場版の後編)で歌い上げる以下の詩は
非常に情緒的でありながら、
「日常系」の崩壊を躊躇いなく歌い上げる痛々しさに溢れている。
無秩序な「迷子」の世界で、戸惑いながらも進むことこそ、
現代における「(パンク)ロック」的行為であるのかもしれない。
「華やぎに馴染めない この心を無視して
輝かしい明日を 推奨しないでくれ
夜空にチカチカ光る 頼りない星屑
躊躇いながらはぐれて ああ 彷徨っている それが僕
僕になる それしか それしかできないだろう
誰の真似も 上手くやれないんだ
こんな痛い日々をなんで 退屈だって片付ける?
よろめきながらでも もがいてるんだよ
迷い星のうた」
参考文献
「イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへ」小関隆、中公文庫
『アイドルについて葛藤しながら考えてみた』青弓社、
アニメ産業レポート2023
https://aja.gr.jp/download/anime-industry-report-2023_summary_jp
2020年代の日本文化の世界発信|石岡良治×宇野常寛×草野絵美×増田セバスチャン×吉田尚記
https://slowinternet.jp/article/230817/
「アニメ研究入門[増補改訂版]アニメを究める9つのツボ」 小山昌弘+須川亜紀子 現代書館
「アニメ研究入門[応用編]アニメを究める11のコツ」 小山昌弘+須川亜紀子 現代書館
「『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』の達成 アイドルの成熟から大ガールズバンド時代へ」|徳田四
「『ガールズバンドクライ』とはなんだったのか:ファックサインと〈日常〉の反転」|徳田四
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セルルック:アニメ新手法の可能性 3DCGの女の子は可愛くなるのか?
https://mantan-web.jp/article/20150505dog00m200007000c.html
『「このままでは日本のアニメが世界で負ける」は的外れ? 海外で広がる“日本風“アニメ』 まつもとあつし
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8d0354da33cae18e75d2edf317be9e3773c9387e
「わが国アニメ産業の現状と課題」https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/14718.pdf
「日本のマンガ・アニメを取り巻く状況」https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/souhatu/h18seika/01anime/01_syu_06sousei2.pdf
「ガールズバンドクライ 急成長を続ける世界市場を狙うアニメ」https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00988/00009/
the pillows wiki
https://ja.wikipedia.org/wiki/The_pillows#%E4%BD%9C%E5%93%81
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