「機動戦士ガンダム  SEED FREEDOM」 ~現代の戦争観と公平・公正な社会について~

アニメ

ガンダム映画歴代史上最高の興行収入48億円、動員観客数250万人以上を打ち立てた、「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」を鑑賞した。

作画、絵コンテ、演出、そして毎度秀逸なアイキャッチ画像(ガンダムがソードを斜に構えた止め画)、新旧のガンダムSEEDのキャラクター総出という豪華な画面に、福田夫妻を始めとした前作までの主流STAFFの布陣で挑んだ本作は、映画作品の展開という意味では完全に「成功した」と言えるのではないだろうか。

ここでは本作が成しえた到達点、成しえなかった点について考えてみたい。

テーマは「コズミックイラ後のディスティニープランに対する復興と主要勢力の闘争」。前作の「 機動戦士ガンダムSEED DESTINY」で示した(そして大コケした)「ディスティニープラン」とその提唱者デュランダルを信奉する残存勢力が、ユーラシア連邦からの独立と勢力圏拡大に向けた暗躍を主軸に展開する。 「ディスティニープラン」 の是非はともかく、前作の意思を明確に引き継ごうとする意識が見える構成となっている。

戦争観は「遺伝子による人間の優劣とそれに起因する紛争」。遺伝子操作に起因する戦争状況の要因掘下げの程度は別にして、「紛争」を戦争の主軸に据える構成は、ゼロ年代以降の現実社会を見据えた、極めて現代的な感覚といえる。

一方で、遺伝子改良人間を巡る争いや、公平で公正な社会の実現を、洗脳という分かり易い悪に負わせて決着させようとする試みは、聊か安易であり、旧来のガンダム視聴者というよりも中高生くらいがターゲットにされているのではと思わされる。

・オルフェ・タオの語る正義のある世界

また、「機動戦士ガンダムSEED」シリーズで度々主題にあがる「正義」論だが、公正公平な社会の実現が正義の実行に必要という概論を繰り返しており、公平とは何か、公正とは何か、ここでは具体的な掘下げは無いというのがポイントである。

むしろここで突っ込んだ議論を多少するならば、公平な社会とは、誰もがその能力や努力に応じて機会や資源を得ることができ、生活の質を向上させることができる社会である。

また公正な社会とは、社会規範や法律がすべての人々に平等に適用され、誰もが法的保護と権利を享受できる社会である。

これらを遺伝子操作人間である「アコード」が推し進めるのは、一種のギャグであり、優性遺伝子支配を唱える彼らによる露骨なプロパダンダ理論となる(ナチスドイツのアーリア人種、、、、とのように)。。。つまりは、突っ込んでみろよ!!という前振りなのかもしてない、、、と大人の姿勢を取ってみるのも一つの愉しみ方である。

「機動戦士ガンダムSEED」 でもう一つ頻出するのが男女間の痴情の縺れによる物語の進行(あるいは停滞)。ここでも旧作と同じく、自意識の不安定さと男女間の痴情のもつれを混同したような描写が中間の折り返しポイントとなっており、それは抽象的な「愛」を巡る議論と、根拠に乏しいラクスとキラの承認で、あっさり回収されている。

個人的に最も残念なのが、シン・アスカの描写である。 「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」で事実上の「主人公交代」の憂き目にあい、デュランダルの理想から引き離すプロット力を最後まで受けられなかった(主に脚本担当者と監督の力量に起因する) 悲劇の 主人公である。彼の成長を描けなかったことがある意味で前作の敗因でもあり、その超克を多少なり期待していた。そしてその期待は見事に、というか想像通り裏切られた。彼はこともあろうにキラ・ヤマトが実質率いる新設軍隊の一員になっており、何とかキラに認めてもらいたい一心で行動する、単に脚本家にとって「使いやすい」キャラのままだった。。ということである。

・ファンサービスとセクシュアリティについて

キャラクターデザインは従来と同じく平井久司による安定的なデザインであり、色彩感と躍動感含めて安心して見られる要素の一つである。
デザインの一つの要素であるキャラクターの心理描写は、前作、前々作と変わらず、表面的な葛藤とその承認によるあっさりした回収ということで、申し訳程度の描写となっている。一方で今回は女性キャラクターの応援の獲得や、その執念が勝敗に結実するという構造を打ち出しており、怨念的な女性の全裸亡者の描写が多様される。とくに終盤では頻出する過剰なセクシュアル表現が直截的で、戦闘の緊張感を大いに下げており、やや幻滅させられる。これは旧来の「機動戦士ガンダムSEED」のファン層(若年層~中高年女性)を踏まえるとかなり切り込んだ印象であり、相対的に男性向けサービスシーンが多め、、ということでターゲットがよく分からない構図である。

・脚本は秀逸、前半部分まで

「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」のアフターワールドとして描かれる内容の前半は楽しめる。後半は分かり易く勧善懲悪で興ざめであるのが残念。

・総評

良かった点:ファンサービスに特化したような旧キャラクター描写の多さ、アクションシーンの丁寧さ、戦術核爆弾による民間人の爆殺表現のリアルさ

改善点:

・「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」を踏襲したような内容の滑り出しで、ある程度展開が読めてしまう(アグネスの暗躍など)、、、

・大局的な戦争と平和の話が前提にありつつ、テロリストに対するというレベルで解決を試みるという矮小化問題が生じている、、、→テロに対する戦争が現代という認識と、平和に対する議論をすり替えているように見て取れてしまう。

・脚本とキャラクターたちのやる気/種割れのあるなしで戦闘シーンの勝敗が決まってしまう(車田正美理論)

・おそらく本作の肝であろう、「愛」の議論が必要性や機能といった表面的な議論に終始している。。→なぜ愛が必要性ではなく機能でもないのか、では愛とは何であるか、議論以上の進展がない。。。

、、、

ということで、色々な観点から改善を願いたい構造は多々あるものの、ファンサービスとしてよく出来ているという視点では、時間がある方にお勧めしても良いのではないかと思います(初見に限る)。

・あとがき

生成AIに分析させた結果(+筆者がまとめた内容)を添付しておきます。

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